gonsampoのブログ

健康のために、いろいろ考え試す日々のブログです

犯罪と脳

最近ニュース番組を見ると、毎日のように殺人事件や高齢者の運転による事故などが報道されています。

高齢者によるものは認知能力や運動能力の低下などが主な原因かと思います。これもMRIなどで脳の状態を見れば、危険度が客観的にわかるのではないかと思うのですが。免許更新の時に、画像診断の結果と医師の所見を添付させる等の条件をつけるとか。対策はできそうな気がします。

でもそれより気になるのが、児童虐待や殺人です。

今もテレビをつけると、一年半で50匹以上の猫を連れ去り、虐待し殺した人が逮捕された事件の詳細を特集しています。

その報道の後には、奥さんを殺した夫とその母親が懲役15年と懲役7年の判決になったとか。人を殺しても刑務所で15年過ごせば済むのですね。被告人やその弁護士は、被害者によるDVなどについて述べ、情状酌量を求めました。殺された人はそのことについて何も語ることはできません。殺された上、誹られるのです。本当のことは被害者が亡くなられているのでわかりません。「加害者の言うことばかりが聞き入れられるような裁判はどうなの?おかしくないか?」と、いつも思ってしまいます。

なぜ動物を虐待したり、他人や自分の子供を虐待し殺してしまうのでしょうか?

自分を守るために突発的に罪を犯す場合もあるかと思いますが、そういうケースは除き、犯罪と脳について調べました。凶悪犯罪が増えたこともあり、脳と犯罪についての研究は進んでいます。

暴力遺伝子で脳が変異?

サイコキラー(猟奇殺人者、サイコパスシリアルキラー)の脳を解析した結果、殺人者の脳の共通点には側頭葉の内側に損傷があること、母親から受け継がれるMAO-A遺伝子(暴力遺伝子)の影響が見られることがわかりました。

キーとなるのは主要な暴力遺伝子、MAO-A遺伝子です。この遺伝子の変異型は正規母集団に属し、X染色体上にあり伴性遺伝し、母親だけから遺伝します。

このことが実際、サイコキラーや非常に凶暴な性質の持ち主が大体男性や少年であることの理由だと言えるでしょう。なぜなら、女子はX染色体を父親と母親から1つずつ受け継ぐため、その性質が薄まるのに対し、男子は母親からX染色体を1つだけ受け継ぐからです。そしてこの遺伝子は母親から息子に受け継がれます。

またこの遺伝子は発生中の脳内セロトニンの過剰分泌と関係があります。これが非常に興味深いのは、セロトニンには人を落ち着かせる沈静効果があるとされているからです。しかし、この遺伝子を持つと子宮内で脳がセロトニンにさらされます。そのため、脳全体がセロトニン非感受性になってしまい、その結果、生まれた後、セロトニンが働かなくなるのです。

暴力遺伝子は子供の頃に深刻な暴力を見たり巻き込まれたりすると発現します。(神経科学者Jim Fallon教授)

再犯率の高さは脳の構造の問題?

カナダのモントリオール大学のシャイラ・ホジンス教授と、キングス・カレッジ・ロンドンのナイジェル・ブラックウッド医学博士らによる研究チームによって、サイコパスといわれる反社会的な人格、サイコパシー(精神病質)をもった人たちが過去に犯した犯罪の結果から学ぶことができないのは、脳の構造に原因があるからだという研究結果が発表された。

サイコパスの脳は、共感や道徳的な思考、罪悪感や羞恥心に関係する部位の灰白質の体積が小さいことがわかった。さらに、報酬と罰を学ぶことに関係する前頭前野につながる白質の繊維にも異常が見つかった。サイコパスの犯罪者に、そうでない犯罪者と同じ矯正プログラムを受けさせても効果がないとするならば、ではどうやったらサイコパスの犯罪を防げるのだろうか?

ホジンス教授は、サイコパス的な行動を起こさせる脳の働きを中心に治療を行うことで、暴力犯罪を減らせるかもしれない、と述べている。

またホジンス教授は、子どものサイコパシーに関する研究はまだ初期段階にあることを前置きしたうえで、「サイコパシーの兆候を示す子どもに、早期の段階で学習を中心にした治療を施すことで、脳の構造や活動を変え、将来の暴力犯罪を減らせる可能性はある」と語った。(Live Science )

犯罪は脳腫瘍などの脳の病変のせい?

米バンダ―ビルド大学メディカルセンター(VUMC)の神経学助教授であるRichard Darby氏が主導する研究班は、「犯行前に脳の異常(脳病変)が確認されていた犯罪者17人」の脳画像データをマッピングした。その結果、各犯罪者たちの障害部位は十人十色、さまざまな脳領域に位置してはいたものの、17人全員の病変が「ある特定の脳内ネットワーク」と強く関係している共通項が示唆された。

今回の研究者たちが「脳異常と犯罪行為の関係性」について従来以上の強い関心を寄せたきっかけは、テキサス大学オースティン校で1966年に起きた銃乱射事件だった。死亡13人・負傷31人の大惨事を引き起こした末、銃撃戦で射殺された犯人(チャールズ・ホイットマン)は、「事件前」から頭痛を訴え、自ら「人格が変わった」と周囲に明かしていた。事件後、犯人の「脳腫瘍」が判明した。

Darby氏は「脳病変がある人に対して、その行為の法的責任を問うべきなのか否か――。最終的には、社会がその答えを出すべき問題であることに変わりはない」と言う。『Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)』

 

全く受け入れることが出来ないですけど、犯罪が犯罪者自身のせいではなく「脳が犯罪を起こさせた」として罪状軽減を目指す行動遺伝学というのがあります。裁判に神経科学的証拠が使われるなど、神経科学が徐々に刑事司法制度に取り込まれ始めている中、デューク大学で法学・哲学を教えるNita Farahany教授は、行動遺伝学を活用して殺人事件などの被告人の刑罰を軽減できるのではないか、と研究を行っているそうです。

こういうのが主流になると、世の中、刑罰を免れた犯罪者だらけになりそうです。

暴力の少ない未来の実現のための具体策を提言している本があります。なかなか問題があって、現実には難しいと思いますが。下記の本です。

 

『暴力の解剖学: 神経犯罪学への招待』(エイドリアン レイン 著)

神経犯罪学を確立した著者が、脳、遺伝、栄養状態等の生物学的要因と、生育環境や貧困等の社会的要因、およびその相互作用から、いかに暴力的な性格が形成されるかを解説しています。

 

おもしろい本なので、一度読んでみてください。値の張る本なので、図書館で借りて読んで、気に入ったら購入されることをお勧めします。

未然に防ぐために、定期健診などにMRIによる脳の検査を入れても良いような気がします。それで悪い結果が出て、隔離されたら嫌ですが、セロトニンを適量増やす薬などを処方してもらって、犯罪に走ることを抑制できるなら、良い方法だと思います。